投資信託

松井証券の主張にだまされてはいけません。

前回の記事で松井証券が毎月分配型の投信を取り扱いを開始するとお伝えしましたが、今回は彼らが毎月分配型投信に対する考え方について触れてみたいと思います。

松井証券の毎月分配型投信に対する考え方

松井証券の毎月分配型投信に対する考え方については以下のサイトをご覧ください。

http://www.matsui.co.jp/service/fund/study/monthly-dividend/

松井証券は、毎月分配型投資信託を「資産形成」のための商品ではなく資産運用の「出口戦略」のための商品と考えています。そのため、毎月分配型投資信託については、積立や再投資ができないように設定しています。

ここでは「4%ルール」と呼ばれる決まりに従い、毎月分配型の投信で運用した場合と単純に資産を切り崩していった場合を比較しています。

65歳から保有資産のうち3,000万円を4%ルール(120万円/年)で取り崩し、残余資産を1.5%/年で運用した場合、運用ありのほうが取り崩し期間が7年延びるのだそうです。

資産推移比較

(引用:松井証券)

手数料を無視したシミュレーション

ここで最近松井証券が追加した投信の信託報酬を見てみましょう。その他のコストがわかるものについては信託報酬との合計値を示しています。

銘柄名 資産クラス 信託報酬
三菱 UFJ 純金ファンド ( 愛称:ファインゴールド ) コモディティ 0.97%
エマージング・ソブリン・オープン ( 資産成長型 ) ( 愛称:エマソブ N) 新興国債券 1.7%
エマージング・ソブリン・オープン (1 年決算型 ) 新興国債券 1.7%
国際 メキシコ・ペソ債券オープン ( 毎月決算型 ) 新興国債券 0.65%
短期ロシアルーブル債オープン ( 毎月分配型 ) 新興国債券 1.34%
ブラデスコブラジル債券ファンド ( 分配重視型 ) 新興国債券 1.62%
国際インド債券オープン ( 毎月決算型 ) 新興国債券 1.62%
ワールド・リート・オープン ( 毎月決算型 ) 海外リート 1.67%
エマージング・ソブリン・オープン ( 毎月決算型 ) 為替ヘッジあり 新興国債券 1.7%
エマージング・ソブリン・オープン ( 毎月決算型 ) 新興国債券 1.7%
ニッセイ健康応援ファンド 国内株式 1.59%
ニッセイブラジル高配当株ファンド ( 毎月決算型 ) 新興国株式 1.91%
iTrust プレミアム・ブランド 先進国株式 1.44%
AR 国内バリュー株式ファンド ( 愛称:サムライバリュー ) 国内株式 1.33%
新興国中小型株ファンド 新興国株式 2.05%
MHAM 物価連動国債ファンド ( 愛称:未来予想 ) 国内債券 0.65%
MHAM 豪ドル債券ファンド ( 毎月決算型 ) 先進国債券 1.35%
みずほ US ハイイールドオープン B コース ( 為替ヘッジなし ) 先進国債券 1.51%
みずほ US ハイイールドオープン A コース ( 為替ヘッジあり ) 先進国債券 1.51%
アメリカ高配当株オープン ( 毎月決算型 ) その他 1.88%
三井住友・中小型株ファンド 国内株式 1.88%
三井住友・アジア・オセアニア好配当株式オープン ( 愛称:椰子の実 ) その他 1.71%
三井住友・米国ハイ・イールド債券ファンド(為替ヘッジ型) 先進国債券 1.73%

毎月分配型投信の場合、平均すると大体1.5%前後でしょうか?上記のシミュレーションの場合利回りは1.5%ですよ?

資産を1.5%で運用しているのに手数料で1.5%も引かれているのでは、プラマイゼロでしょ!取り崩し期間が7年も伸びるのはおかしくない?

次に信託報酬を無視して、3,000万円を4%ルール(120万円/年)で取り崩し、残余資産を1.5%/年で運用した場合を計算してみました。

年数 運用あり(万円) 運用なし(万円)
0 3000 3000
1 2925 2880
2 2849 2760
3 2772 2640
4 2694 2520
5 2614 2400
6 2533 2280
7 2451 2160
8 2368 2040
9 2284 1920
10 2198 1800
11 2111 1680
12 2023 1560
13 1933 1440
14 1842 1320
15 1750 1200
16 1656 1080
17 1561 960
18 1464 840
19 1366 720
20 1266 600
21 1165 480
22 1062 360
23 958 240
24 852 120
25 745 0
26 636
27 526
28 414
29 300
30 185
31 68
32 0

松井証券の主張どおりの結果になりました。したがって松井証券のシミュレーションは手数料を完全に無視していると思われます。実際は手数料で資産が目減りしますから、取り崩し期間を7年延長するためには期待利回り1.5%では全然足りないということです。

松井証券は嘘はいっていません。よく見ると「年1.5%で運用する」といっているだけですから実質利回りが1.5%で運用すればシミュレーションに近い結果が得られるということです。

ですがこれはちょっとどうなんでしょうか?てっきり期待利回りが1.5%の投信を利用すれば、シミュレーションの近い結果が得られるのではないかと思う人もいるのでは?それに必要な期待利回りを自分で計算しないと投信が選べないので不親切なのではないでしょうか?ちゃんと手数料は考慮していませんって書いて欲しかったです。

再シミュレーション

これでは期待利回りがどれくらいの毎月分配型投信を購入すればよいのかわかりません。そこで手数料と税金を考慮して再シミュレーションしてみました。ついでに類似商品として分配金を出してくれるETFと比較してみました。シミュレーションした金融商品の詳細は以下の通りです。

  • 毎月分配型投信(販売手数料:松井証券に準じて無料, 信託報酬1.5%)
  • 国内ETF(販売手数料:SBI証券に準じて994円(3000万一括購入時)および628円(切り崩すとき),信託報酬:0.3%)

前提条件は以下の通りです。

  • 3000万円で金融商品を一括購入して運用開始する。120万円を上回るためNISAでは運用はできない。一年ごとに120万円切り崩す(換金)。
  • 運用する場合、利回りは一律1.5%とする。
  • 金融商品の評価額は一定とする。したがって売買損益は0で税金はかからない。
  • 分配金は受け取るたびに税金(20%)が差し引かれる。
  • 手数料と税金は純資産から支払う。

結果はこちらです。

シミュレーション結果1

 

毎月分配型投信は運用しない場合にくらべ、1年程度早く資産がゼロになってしまいました。

これは利回りと同率の信託報酬の支払いに加えて、分配金にかかる税金によって分配金が目減りしているためだと考えられます。

それに対し信託報酬0.3%のETFで運用した場合、運用なしに比べて取り崩し期間が3年程度延長できています。ETFは売買手数料がかかっているのにもかかわらず、毎月分配型投信よりも良好な結果が出せていますね。いかに信託報酬がパフォーマンスに影響を与えるのかがわかります。

ちなみに毎月分配型投信の利回りを4%に引き上げた場合の結果は以下の通りです。

シミュレーション結果2

これで大体松井証券の主張通りの結果になりました。4%というのは決して不可能な利回りではないとはおもいますが、利回りを上げることはその分下落リスクも大きくなるため、老後の資金の運用としては不適切だと思います。

同じ効果を狙うのであれば、より低い利回り(より低いリスク)でも実現できるETFのほうが優れているといえます。

まとめ

松井証券が提案しているシミュレーションは手数料と税金を考慮しておらず、実際にシミュレーション結果を実現するためには、約4%以上の利回りが期待できる毎月分配型投信で運用しなければなりません。さらに分配金や金融商品の評価額の変動によってはより高い利回りが要求される可能性があります。

ETFは売買手数料がかかるものの、信託報酬が毎月分配型投信とくらべ5分の1以下であるため、手数料による総資産の目減りが少ないです。4%ルールを実施するのであればETFで運用するほうが望ましいと思われます。

ひとりごと

ETFを組み入れたポートフォリオを提案して分配金がもらえる仕組みをつくればよかったのに、なんで毎月分配型投信なんか採用したのでしょうか?

松井証券もぼったくり手数料で客の資産を巻き上げるつもりなのでしょうか?私、松井証券アンチになりそうですよ。